物理柵と心理柵

「シカにゲンコツ」は心理柵

野生鳥獣額対策に使う防護柵は大きく二つに分類される、一つは、金網やワイヤーメッシュなどを使い、強度により害獣の侵入を阻止する物理柵であり、もう一つは心理柵である。心理柵の代表は、接触したとき電気ショックを与える電気柵(電気牧柵)で、ビリッと痛みを感じたことで学習し、再びワイヤー(電線)に接触することを嫌うようになる、つまり電気柵を避ける行動をとるようになることから心理柵と呼ばれる。

馴致(じゅんち)

心理柵として電気柵の効果をあげるために、まず「電気柵が嫌なもである」ことを覚えさせる必要がある。この馴致(じゅんち)と呼ばれる体験のために、一度は害獣を電気柵に接触させなければならない。

イノシシ被害が多発する地域では、イノシシ向けの電気柵を張って対策する。そこいらじゅうに電気柵が張り巡らされ、イノシシが柵を嫌なものと認識するようになると、通電していない電線を張っただけ柵をもイノシシは避けるようになる。(琴海町農家の実例)

初回の接触は、電気柵がどのようなものであるか知らないまま害獣が接触するので、勢いがついて進んでいる獣は止まることができずワイヤーを切ることがある。電気柵を設置した当初は、見回りを頻繁に行い、柵の保全を心がけたほうがよい。

雑草刈り払いの意味

電気柵(電気牧柵)を設置するとき、柵にそって、2m程度の草を刈り払うよう多くの説明書に書かれている。
刈り払いは、電気柵に雑草が触れて漏電することを防ぐために行うだけでなく、電気柵を対象獣にはっきりと見せるためにも必要である。

心理柵の逆効果

収穫時期をすぎた圃場に残してある電気柵は、通電しておくか、さもなければ撤去するべきという意見が多い。
電気柵は心理柵であるので、「この柵は害がない」「この柵はただ線を張ってあるだけの柵」と対象獣が認識すれば、効果がなくなる。電気をかけない、ただの電線(ワイヤー)が張られた柵を冬場に接触した害獣が、何も実害を感じないことで、春に通電した電気柵を突破しようとして電気柵を壊す事例が多い。

2013年7月22日 by ぽこた