追い払い:野生鳥獣被害対策

追い払い

被害を与える鳥獣が現れたとき、追い払って被害を回避する。
追い払いは、ケモノではサルに対して行われることが多く、花火、エアソフトガン、スリングショット(パチンコ)などを使う方法が一般的である。

捕獲したサルにテレメトリーを装着して再び群れに戻し、サルの群れの動きを確認しながら先回りして、圃場に近づく群れに対して追い払いを行う例が多い。テレメトリーを使わない場合は、サルの群れが出現した地域からの連絡を受け、市町村の担当者が装備を持って駆けつけ追い払う方法となる。
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エアソフトガン

エアソフトガンは連射が効くがそれほど射程はない、どちらかというと、エアソフトガンを携え駆けつける、血相を変えた人間の迫力のほうが威嚇の効果があるのかもしれない。
エアソフトガンの追い払いに慣れてくると、威力が弱いエアソフトガンで撃たれたサルは、嫌そうな顔はするが、それほど動じないことが結構ある。

スリングショット(パチンコ)

スリングショット(パチンコ)は比較的射程が長いが、発射は単発になる。追い払いには、玩具に多いY字形のパチンコでなく、ピストルグリップ様のグリップを握るタイプのものを使う。野生獣を殺すほどの威力はない。
命中精度を上げるため、スタビライザーやサイト、アームホールド(リストブリース)が装備されているものもある。発射方向に人がいないことを事前に十分確認しなければならない。
使用する弾は、8mmほどの鉛球、鉄球などであるが、野外では発射した弾を回収することが難しく、鉛弾は鉛害が懸念される。
市街地では、サルに当たらなかった場合、住宅の壁や窓、車などを損傷させる懸念が大きい。発射方向にバックストップ(安土)があることを確認するのは、装薬銃を使う狩猟のときと同様である。
スリングショットに使うゴムには、パイプ状の丸ゴムと四角い断面の平ゴムがある。丸ゴムは切れにくいが引くのに力が必要で、女性には使いにくいといわれる。平ゴムは引きやすいが切れやすい。

花火

ロケット花火を使うサルの追い払いは、農水省の「野生鳥獣被害防止マニュアル」に平成22年の夏まで書かれていたこともあり、手軽であるため多くの市町村で行っていた。
同年、経産省が野生鳥獣の駆逐に使用する花火について農水省に通達を出し、農水省は「野生鳥獣被害防止マニュアル」の記述をロケット花火ではなく、動物駆逐用煙火を用いて追い払うよう改訂した。
動物駆逐用煙火は筒様の連射型で、講習を受け保安手帳を得た者に渡して追い払いを行う市町村が増えている。以前と同様にロケット花火で追い払いを行う地域もある。

忠犬プロジェクト

長野県木曽郡南木曽町ではじまった、特別に訓練した柴犬を使って追い払う方法である。圃場に柴犬を離し、サルが現れたら吠え立てながら追い、遠くまで追い払う。「忠犬プロジェクト」に登録する忠犬は、3ヶ月の訓練を行う。訓練費用15万円の半額を町が負担。忠犬の出動のために、忠犬であることを示す首輪、看板、保険料なども補助している。
忠犬プロジェクトは木曽地域にとどまらず、長野県内の大北地域、飯伊地域などにも導入が広がっている。

ゴム弾

実害を感じさせるものに、装薬銃でゴム弾を発射したり、空砲で追い払う方法がある。
サルの追い払いに散弾銃でゴム弾を撃つ事例では、サルは一目散に逃げるものの、一週間ほどすると再び戻ってくるようである。そのたびに猟友会に出動を頼むのがネックになるという。

そのほかの追い払い

そのほか、かかし、目玉風船、爆音器、ディストレス・コール、反射テープ、ライト、クレオソート、木酢液、忌避剤、超音波、レーザーなどによる追い払いがあるが、慣れると効果が失われる。
早いもので3日間ほど、長いものでも一週間ほどで慣れるといわれる。効果を持続させるには、設置場所や種類、パターンや反応時間、などを頻繁に変える必要がある。
糞尿や刺激臭のあるものを置くと、転げ回り首のあたりに擦り付ける行動がしばしば見られる。
認識は、まず最初に、音。次に離れた距離での視認、さらに直接の確認へと進む。各々のステップで安全を確認し、次第に近づいてくる。

鳥獣自身が実害を感じないと効果はない

いずれの追い払いにしろ、鳥獣自身が実害を感じなければ慣れてしまい、追い払いの効果が得られない。

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2013年7月16日 by ぽこた