野生鳥獣被害対策の基本は、3つ
野生鳥獣被害対策の基本は、どの市町村でも変わらないすわなち、「個体数調整」、「防護柵」、「追い払い」である。地形や生活形態により、その割合がかわる。
個体数調整
「個体数調整」は、対象の野生鳥獣を「有害鳥獣」として捕獲または駆除を行う。捕獲、駆除は、装薬銃によるものと罠によるものがある。県が、市町村に目標頭数を示し、対象の鳥獣を猟ることも多い。劇薬、毒薬による薬殺、爆発物による爆殺、かすみ網、吊り上げ式くくり罠、トラ挟み、落とし穴などによる駆除や捕獲は法律で禁止されている。
防護柵
「防護柵」は、圃場を柵で囲うことで対策を行う。広範囲に集落を含めて囲む場合もある。複数の市町村が連携し、山地と耕作地、居住地の境界に、長い距離の防護柵を設置する場合もある。防護柵には、ホームセンターで販売している網、ステンレスを編み込んだ漁網、建築資材の溶接金網を利用するもの、基礎工事を行いLアングルとフェンス用の金網を使うものなど、さまざまなものがある。サルに対する防護柵は、電牧器を併設する。
追い払い
「追い払い」は、被害を与える鳥獣が出現したとき、花火、エアソフトガン、スリングショット(パチンコ)などで人間が追い払う方法。特別に訓練した犬による追い払いがある。そのほか、かかし、目玉風船、爆音器、ディストレス・コール、反射テープ、ライト、クレオソート、木酢液、忌避剤、超音波、レーザーなどによる追い払いがあるが、鳥獣自身が実害を感じなければ慣れてしまい、効果が失われる。
「防護柵」、「追い払い」は、被害を引き起こす鳥獣の頭数が減らず、鳥獣は繰り返し現れるため、根気強い対処が必要である。しかも、鳥獣は次第に学習し、人間のウラをかく行動をとるようになるので始末が悪い。
- 昼になるとサルの群れが出現する。
昼のサイレンが鳴ると、昼食のために人間が圃場から家に向かうことを知っている。 - ホームセンターで買った網を張ると、シカはやがて下の隙間から入り込む。
接触しても危害がないと判断すれば、体当たりして網を引きずり支柱を倒して突破する。
そのまま穂をつけた田んぼに入り込み、網を引きずって稲を倒した例もある。 - 追い払いに慣れたサルの群れは、2、3匹を斥候として出す。
安全が確認できれば本隊も現れる。
追い払いにあえば、斥候は林まで戻り、本隊と共に人がいなくなるまで待つ。 - 装薬銃による有害鳥獣駆除で追われても、遠くまで逃げず、近くの茂みに隠れる。
などの、例を聞いた。
いずれの市町村のヒヤリングでも、最終的には「個体数調整」を行わないと、野生鳥獣被害は減らないという回答になる。